農業の it活用

農業現場で取り組める小さなIT活用

農業現場で取り組める小さなIT活用

執筆者

おおさき(@massa_potato

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前回は、農家の僕がITツール制作をするようになった経緯についてお話しました。

二年前の僕は「ちょっと周りよりパソコンに詳しい」くらいの知識しかなく、農業のIT化にどうついていけば良いのかよくわからないまま、普段の農作業に取り組んでいました。

もしかすると、同じようにモヤモヤしている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は 農業現場で取り組める小さなIT活用 というテーマで、僕が感じている農業ITの課題感と、どういった視点で現場でITを活用していけば良いのかを具体的に考えてみたいと思います。

「スマート農業」の現状と課題

「農業IT」といえば、近年では 「スマート農業」 という言葉をよく耳にします。

スマート農業は、農水省のサイトでは以下のように説明されています。

「ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を推進している新たな農業のことです。


 (中略)


日本の農業技術に「先端技術」を駆使した「スマート農業」を活用することにより、農作業における省力・軽労化を更に進められる事が出来るとともに、新規就農者の確保や栽培技術力の継承等が期待されます。

(引用:スマート農業とは、どのような内容のものですか。活用によって期待される効果を教えてください。:農林水産省

最先端技術が発達したことにより、それらが農業分野の課題解決の手段として期待されているのですね。

例えば、北海道の畑作・稲作地帯では、GPSを利用した自動操舵トラクターが普及し、省力化がドンドン進んでいます。

また、IoTによる施設・自然環境のモニタリングや自動灌水システムのような、データを活用して高品質生産につなげるハード・ソフト製品も増えてきました。

ですが、ここで現場の人間としてはいくつか課題に感じることがあります。

  • スマート農業システムは高価なこと
  • 自身の農場にマッチするか分かりづらいこと
  • データの互換性がなく、システムに依存しがちであること

特にあまり大きな投資ができない中小規模の農家にとって、インパクトのある設備投資はとてもハードルが高いですよね。

こういった課題があるので、新たなシステムを導入するにはそれぞれのメリットやデメリットを理解した上で、自身の農業形態や目的にピッタリ合うものを選択する必要があります。

ここ数年で世間の農業への世間の関心も高まっており、便利なスマート農業システムはどんどん増えています。
それはとてもありがたい反面、どれを選択すれば良いのかが難しくなっているのも現状かなと思います。

農業現場のIT化の目的は何か

近年では色々なところで「IT化」が求められている時代で、農業も例外ではなくなってきています。

ですがひとえに「農業にもIT化が必要!」と言っても、僕たち農家がやるべきことは「ハイテクな農業機械を導入する」ことが目的ではないはずです。

では、農業現場にとって本当に必要なことはなんでしょうか?

それはシンプルに 「農業経営をプラスにすること」 だと考えます。

・・・もうちょっと掘り下げてみましょう。

この「経営をプラスにする」とは 「利益を上げて事業を継続すること」 と言い換えられます。

まず利益を上げるためには「収益を増やす」「支出を減らす」という二つのアプローチがありますね。
そして事業を継続するためには、色々な捉え方があると思いますが、ここでは「資産を守る」ということを挙げてみます。

こうやって分解していくと、こんな要素が見えてきました。

収益を増やす

  • 収量や品質をアップする
  • 栽培面積を増やす・栽培品目を変える(高収益化・リスク分散)
  • ブランド化して販売価格を上げる、販路を増やす

費用を減らす

  • 投下資材を(長期的な視点で)減らす
  • 作業効率を上げる
  • 設備投資と人件費を比較して選択する

資産を守る

  • 長期的に土地・人・設備といった資産を育てていく
  • 労働者(経営主や家族も含む)の健康を維持する

挙げてみたのはあくまで一例ですが、では改めて、農業現場に必要なIT化とは何でしょう?

僕なりの答えは、色々な要素がある中で 「優先度の高いところをITを活用して改善すること」 なのかなと考えます。

逆にいうと、優先度の低いところにITを取り入れても、例えインパクトは強くてもあまり意味がありません。

このように考えると、漠然としていた「スマート農業」「農業のIT化」の目的が少し具体的になってくるのではないでしょうか?

キーワードは「データ収集」と「効率化」

さて、農業現場のIT化の目的を「農業経営をプラスにすること」と設定してみました。

実際に投資する際にはこの目的を達成するかどうかを見極めれば良いのですが、価格面などを考えるとやはり難しいことも多くあります。

実は、全てのIT化を市販のスマート農業システムに頼らずとも、 もっと身の回りに僕たち現場の人間でも改善できることがたくさんあるはず なんです。

その身近な改善のキーワードが 「データ収集」「効率化」 になります。

これらはそもそもITを使わずともできますし、実際に現場で長い時間をかけて取り組んできたことも多いですよね。

例えば作業の記録をつけて栽培管理に生かしたり、施設に温度計を設置して一定時間ごとに記録するのは「データ収集」にあたります。

また、倉庫の動線を考えたり作業をマニュアル化したり、事務資料をファイリングして取り出しやすくするのは「効率化」にあたりますね。

多くの農家にとっては、ほんのちょっとした業務データの整理、効率化をするだけで、仕事が今より便利に快適になるはずです。

そしてこれらの取り組みととても相性が良い手段が、現場で働く人たち自身、もしくは現場に近い方たちがプログラミングやITツールの活用を学んで取り入れることかな、と思います。

(1)データを集める

農業に必要なデータは、大きく分けて「環境データ」「管理データ」「生育データ」の3種類があると言われています。

中にはなかなか集めるのが難しいデータもありますが、できるところから少しずつ集めておくのが効果的です。

例えば作業記録や人員、資材などの「管理データ」はちょっとしたプログラミングやデータ活用のスキルで集めやすいですし、自然や施設の温湿度などの「環境データ」はIoTを使って楽しく集められる部分でもあります(やや難易度は高いですが)。

(2)効率化する

農家の本質的な仕事は、土や作物の様子を観察しながら良い作物を作る生産活動です。
さらにはその生産物を通じて利益を生み出す経営活動も同時に行っていかなければいけません。

なかなか思うように作業が進まず、人手の確保も難しくいっぱいいっぱいになってしまうこともあります。

そんな中で重要な仕事に集中できるように、事務作業や在庫管理などのあまり本質的でない部分はできる限り効率化していくことがストレスを減らすコツだと思います。

これらも、ちょっとしたプログラミングやITツールによる改善がしやすい部分です。

身の回りの「小さなIT化」を楽しもう!

ここまで、農家として「スマート農業」「農業のIT活用」とどう向き合えば良いか?ということを考えてみました。

農作業、農業経営をサポートしてくれるスマート農業システムは便利なものが多いので、予算と重要性に応じてそれらを選択して取り入れるのがもちろん効果的です。

ですがそれ以外にも、身の回りには「データ収集」「効率化」という視点で 自分たちでもできる小さなIT化 の余地がたくさんあります。

大きな改善でなくても、ほんの小さな改善でも効果を実感することができるはず。

今の時代は、僕たち非IT業界にいるノンプログラマーでもITスキルを学べる機会は非常に多くなっています。

プログラミングやITツール制作の楽しさを、農業現場に携わっている皆さんともっと共有できたら良いな、なんて思っています。

まずは身の回りの「不便」を探し、その改善手段としてのITスキルを身につけながら、小さなIT化を楽しんでいきましょう!

おわりに

さて、今回は 農業現場で取り組める小さなIT活用 について考えてみました。

次回は、具体的にITツールのDIYに必要な道具を揃えていこうと思います!

ノンプログラマーでも取り組みやすい「プログラミング」や「ノーコード開発」について、その学び方やどんなことができるのかを紹介したいと思います。

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