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前回は、当ブログのメインテーマである「農家のITツールDIY」についてお話しました。
素人がITツールを自作することの意味や魅力をお伝えできたかなと思います。
今回は、農家の僕がITツール制作にハマった理由について、自己紹介やこれまでの経験を交えながらお話してみたいと思います。
僕は普段、北海道で畑作専業農家を営んでいます。
基本的に日中には農作業を、雨の日や夜の時間帯にはパソコンに向かい、ノンプログラマー向けの学習コミュニティで学んだりしながら、仕事で使える便利なITツール作りに取り組んでいます。
2010年の春に家業の後継として親元就農しましたが、それまでIT関係に携わっていた経験は全くありません。それどころか他の職種を経験したこともなく、もっというと学生時代は農業にもITにも関係のない環境にいました。
もともと農家を継ぐつもりも全くなくて、農業に携わることになったキッカケは正直、あまりポジティブなものではなかったかなーと思います。
当農場は家族だけで営農を行っており従業員もおらず、生産がメインのためお客様と相対することもありません。
そのためもあって就農して数年間は社会性をほとんど身につけることなく、意欲の低いままなんとなく農作業をこなしているという状況でした。
どこかで、このまま農作業だけしていてもダメだなーと思い、仕事をしながらも地域内外のイベントや組織に携わるようにしました。
それなりの立場を経験させていただく機会にも恵まれて、道内・道外での販売会に参加させていただいたり、若手農業者の交流イベントの運営や、講師として組織作りについて若手なりの視点でお話する機会をいただいたこともあります。
その過程で失敗もたくさんあり、自分の考えの甘さを見つめる経験になりました。
自身の農場においても、直売所や飲食店さんへ出向いて直販をしてみたり、六次産業化みたいなことを目指して動いてみたこともありました。
ですが結局「自分は本当は何をしていきたいのか?」「何をすると価値があるのか?」ということが見えておらず、どれも中途半端なまま。これといった成果に繋げることはできませんでした。
そんなこんなで一通り外に出る経験を積んだ後は 真面目に農作業に向き合うことが農家の本分 だと反省し、改めてちゃんと目の前の農作業に向き合って取り組むことにしました。
農業経営は、土台となる生産がしっかりできていないとなかなかうまくいきません。そこで特に集中してやってみたことが、
・作業日誌をつけること
・作業マニュアルを作ること
という簡単で当たり前のことでした。
農業の熟練者は皆さん経験に頼りがちで、「記録を残す」「言語化して伝える」という必要性がなく、その習慣があまりないように思います。
このような経験値が整理されていて手元で参照することができれば、就農時からもっと早く生産技術を身につけられたのかなーと思ったりもします。
当時の僕はITに関する知識はほとんどありませんでした。作業日誌としてExcelを使ってみたり色々試しましたが、うまくデジタル化の習慣がつけられず、アナログの手帳に書くやり方に落ち着きました。
作業マニュアルについては三年くらいかけて実際の作業の写真を残し、マニュアル化の作法もわからないなりにWordで文章化してみました。
もちろんどちらも作る過程で自身の糧になったのは間違いないのですが、そのままではあまり活用しづらく、発展させられない状態でした。
2019年の春…この執筆時点からおよそ2年半ほど前の30歳の頃です。色々と重なり、だいぶ体力的・精神的に農業が苦しくなった時期がありました。
このままじゃまずいなと思い、気持ちを切り替えるためにオンラインでWebプログラミングの学習を始めることにしました。もともとパソコンが好きだったため、興味があり惹かれる部分がありました。
では一体プログラムで何を作ろうかと考えた時に、一番に思い浮かんだのが 「簡単に使える農作業日誌アプリを作れないかな?」 ということです。
アナログで作業日誌をつける習慣はできましたが、やはり検索性も携帯性も悪いです。
デジタル化をしたくてWeb上で使える営農日誌サービスもいくつか試したのですが、導入時の入力が手間に感じたり、記入時に入力項目が多くて続けることができず、もっとライトに記録する手段が欲しいと思っていたんです。
思い返すと、当時の僕の課題は、
・何が業務において必要な情報なのかがわからず、記録すべきものがわかっていなかった
・デジタル化する意義や仕組みがわからず、アナログ思考のまま取り組んでいた
つまり業務知識とITリテラシーが足りなかったためうまく活用できなかったのかなと思います。
プログラミングを始めて1年が経った頃に、ようやく課題だった農作業日誌を作ることができました。
それはGAS(Google Apps Script)というGoogleサービスの扱いに長けたプログラミング言語に出会ったおかげでした。
制作したのは、スマホで日常的に使っているLINEを使って数タップで作業記録を入力して、その記録をGoogleカレンダーに自動登録して参照できるようにしたものです。
今思うと、もっと早く簡単にシンプルなものを作る手段があったなーと思いますが、その時は自分でゼロから作らなくても、既にあるITツールを組み合わせて動くものができると知ってとても感動したのを覚えています。
実の所この自作の作業日誌アプリは今はもう使っておらず、アグリノートという営農日誌サービスを使うようになりました。
なんだか回り道ばかりしているようですが…これはおそらく自分で作る経験から ITリテラシーが身に付いたおかげで既存のシステムの仕組みが分かり、どのようにデータを残していけば良いのか・なぜそのデータを用意する必要があるのか腑に落ちたため、活用できるようになったのかなと思います。
これが僕がITツールのDIYにハマった理由です。
ITの活用の仕方がわかってくると、日常の業務に対する見え方も変わってきます。
ほんの小さな気づきがまた新たなアプリやサービスの使い方を学んだりツールを作ったりするきっかけに繋がり、またさらにできることが増えてくるのが楽しくなってくるのですね。
さて、今回は農家の僕がITツール制作にハマった理由についてお話してきました。
ちょっと熱が入って、だいぶ長々と語ってしまいましたね。汗
次回は、現時点で感じている中小農家のIT化の現状と課題について、僕なりの視点でまとめておきたいと思います。
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